尿漏れや子宮脱(骨盤臓器脱)にも、理学療法は高い効果を発揮します。重い症状に進行してしまった場合は外科的な治療が必要になることもありますが、とくに子宮脱(骨盤臓器脱)は薬を飲んでも治るわけではないため、症状が軽い場合は理学療法が第一の治療法になります。
具体的には、まず患者様ひとりひとりに問診をおこない評価(リンクで治療の特徴へ)することからはじまります。つぎに原因に合ったプログラムを選択し骨盤底筋を鍛えたり、柔軟性を向上させたり、骨盤底筋が動きやすい身体に整えたりすることで改善を図ります。
他には日常動作のアドバイス、生活指導をおこなうこともあります。
例えば頻尿の方には、1日の水分摂取量と排尿量を記録する「排尿日誌」をつけていただくことがあります。
おしっこの回数や水分の摂り方などを細かく見返すと、じつは単なる水の飲みすぎであったり、トイレをみかけては頻繁にトイレに行ってしまうなどその人の排尿のクセのようなものだったということも少なくありません。
このように私たち理学療法士は、患者様の生活を総合的にみて改善へと導いていきます。
個人差はありますが、当クリニックでの介入の頻度は平均すると1ヵ月に1回のペースで大体3~4回くらいになります。それぐらいでやっと、患者様は骨盤底筋を動かす感覚が分かってくる感じですね。1回で終了の方もいれば、なかには10回・20回と来られる方もいます。
私の場合、ご自宅で行っていただくストレッチングや筋トレのプログラム、生活上の注意点などを紙に書き、患者様に渡しています。普段はご自分でトレーニングを行ってもらい、月に1回くらい来院していただきます。状態をチェックして、次の段階に進めそうなら、その上のプログラムを組んでいきます。
医師によって理学療法が必要と診断されたら、「あなたはこういう症状で、こういう目的のために、理学療法が必要です」と説明され、患者様が納得すれば理学療法を受けることになります。なかには自分でネットや雑誌で探して来られる方もいますが、医師の指示がないと実施できないため、まず医師の診察を受けていただきます。
ウィメンズヘルス理学療法の分野ができたとはいえ、婦人科・泌尿器科に関する理学療法を行うところは、全国的にもまだ本当に少ないのです。そのため、沖縄など遠方から飛行機に乗って当クリニックに来られる方もいます。
一般的な理学療法は保険が効きますが、婦人科・泌尿器科領域は保険適用外。現在は自費となります。当クリニックでは30分5,400円(税込)です。
LUNA骨盤底トータルサポートクリニック《横浜》
TEL:045-680-1226
常に「姿勢をよくしておく」ことが大切です。子宮脱(骨盤臓器脱)や尿漏れは、姿勢が悪く、骨盤が後ろに倒れている方に起こりやすい。骨盤をしっかり立てて、姿勢をよくすることが大切です。
基本的な動きを2つご紹介します。
骨盤底筋が硬いと締めにくくなりますので、骨盤底筋と連動している股関節周りからストレッチングするのがおすすめです。
あぐらをかくように座り、足と足の裏をくっつけ、両足首を両手で持って、ひざが床に近づくように身体を前屈させるようにしてみましょう(図1)。あくまでも反動をつけずに、ゆっくりじわ~っと筋肉を伸ばすことが大切です。
また、あお向けになり、片足のひざに反対の足首をのせ(半分あぐらのような形)、足首をのせられた方の足を両手で身体に近づけてみましょう(図2)。開いた足の方のお尻から太ももの裏が伸ばされるはずです。
骨盤底筋のトレーニングは、あお向けから始めてみましょう。まずは肛門側を締めるようにしてみて、次に膣を締めてみましょう。その感覚が分かってきたら、肛門と膣、両方を身体の中に引きこむ感じで締めてみます。
あお向けで感覚がつかめなければ、四つん這いなど姿勢を変えてみましょう。引きこむ感覚が分かってきたら、座ってでも、立ってでも、いろいろな姿勢でできるようにトレーニングしていきます。呼吸は止めないように注意しましょう。自然呼吸で締めたり緩めたりできるのが理想ですが、できなければ軽く息を吐きながら締めるようにします。
骨盤底筋を整えれば、更年期に増えてくる尿漏れや骨盤臓器脱の予防になります。骨盤底筋を動かすとインナーの腹筋も使うため、姿勢もよくなります。体幹のコアの機能がしっかりしてくるので、腰痛予防にもつながりますよ。