薬膳は中医学理論に基づいて作られた“疾病予防と健康維持のための食事”です。
紀元前10世紀以降、皇帝の食事を管理する食医が病気の予防・治療を目的とした日々の食養生が起源で「薬食同源(薬も食材ももとは同じ)」という考え方によるものです。
“薬膳”という呼び名は最近のもので、1980年代から使われ始めた言葉です。
薬膳と聞くと、高麗人参や特別な生薬を使ったスープを思い浮かべるかもしれませんが、実は普段私たちがあたりまえに口にしている食材すべてが様々な効果を持っています。わかりやすくお伝えすると、症状や体質に対し、食材の持つ作用を考え、組合せることで改善に導く食事が薬膳です。
薬膳にまつわる用語の解説を少ししておきますね。
中医学では、人の体は気・血・水という要素で構成され、3つのバランスがとれた状態を健康としています。西洋医学でいうところの臓器に近い概念である、五臓※1が、それぞれの働きで、この気血水のバランスを保つ役割を担っています。
食材のもつ体を温めたり、冷やしたりする効果を〈五性※2〉といいます。
また、食材の持つ味の効果を〈五味※3〉といいます。
そして、食材の効果が五臓のどの部分にあらわれるのかを示したものを帰経といいます。
他には、季節や食材の色にも意味があります。
このように食材のさまざまな要素である五味、五性、帰経、季節、効能を組合せてレシピを考えるのです。
薬膳は生活と密着した学問だと思います。
誰にでもできるケアを紹介するなら「旬の食材を食べること」、これだけでもとても意味があります。その季節に必要な(食べた方がよい)食材と旬の食材は重なっていることが多いです。
例えば、秋になると梨が店頭に並びます。秋の味覚である梨は、秋に弱りやすい肺を補う白い食材です。先に説明した全ての要素を組合せることは、多くの理論を理解する必要がありますが、食材選びに旬の食材や色、味といった特性を取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか?